NPO法人ぐんま緑のインタープリター協会紙

協会紙表紙

春季号 第55号 2017年4月10日


平成29年度を迎えるにあたって

  理事長 関端 孝雄

理事長の写真   協会員の皆様には、日頃から協会の運営や多数ある行事の実施につきましてご支援ご協力を頂き心より感謝申し上げます。皆様ご存知の通り、昨年6月には環境大臣より「地域環境保全功労者」として表彰状を授与されました。このことは協会員皆様の努力の賜とお喜び申し上げます。当協会は平成15年に誕生しましたので、今年度で創立15周年を迎えます。これからも協会員の皆様が「緑のインタープリター」として「人と自然との共生・循環型社会の実現」を目指し、地域環境保全のための社会貢献活動において活躍できる協会でありたいと考えております。
  毎年5月2日は、国連総会が定めた「国際生物多様性の日」で、植樹を行おうと呼びかけています。気候の変動が生物多様性を失わせる直接的な影響を与える恐れがあると言われます。人類が生活のために行って来た開発で、生態系の破壊やそこに生活する生物種の絶滅及び特定生物種の異常発生など深刻な危機にあります。急速に進みつつある地球温暖化などの気候変動はその大きな原因です。「パリ協定」では、化石燃料から脱却して温室効果ガス排出を今世紀後半には「ゼロ」にする脱炭素社会を目指しています。生活する人々全てが生態系の一員であること、そして地球温暖化の状況を理解し少しでも脱炭素社会を目指せるよう啓蒙出来ればと考えております。
  協会の事業活動は多岐に渡っておりますが、皆様ご承知の通り総務企画、普及、受託協力及びインプリの森の4部会による責任体制で行われます。今年度取り上げる各部会の重点目標は、総会資料の「基本方針」に記したとおりです。外部団体からの委託事業や普及活動、森林整備、自然保護的な活動は社会貢献として意義があるものと考えます。そして、これらの活動を効果的に運営するには自己の資質向上に資する研修が必要です。
  終わりに、当協会の発展と協会員皆様のご活躍を祈念し、新年度を迎えてのご挨拶といたします。

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校庭の樹木@   ソメイヨシノは異色の交雑種

  顧問  亀井 健一

   児童生徒が入学する時期に咲くソメイヨシノは、多くの学校に植えられています。入学を祝福し歓迎しているように思えます。

ソメイヨシノの写真   ところで、ソメイヨシノが誕生するまでは、サクラと言えばヤマザクラを指していました。江戸末期に突然、造園師や植木職人の集落があった江戸の染井村(今の豊島区駒込)で、ソメイヨシノの苗木が販売され、ヤマザクラにはない特徴が評判になったようです。明治期になって全国的に普及しました。成長が早く、花がたくさん付き、一斉に咲き、一斉に散るという野生種にはない特徴があります。また葉が展開する前に花が咲きます。これらの特徴が日本人に好まれたのでしょう。公園や学校などに多く植えられ、ソメイヨシノの名所が各地にあります。

  植木職人がどのように作出したのか明確な記録がなかったために、誕生について諸説がありました。オオシマザクラとエドヒガンの特徴が部分的に見られるので、この両種の雑種ではないかという見解もありました。最近、森林総合研究所の遺伝子分析により、この見解が大筋で確認されました。細かく言えば、ソメイヨシノの由来は、エドヒガンが47%、オオシマザクラが38%、ヤマザクラが10%、その他が5%と判明したそうです。研究のチーム長は、ヤマザクラが少し交じったオオシマザクラ(父親)とエドヒガン(母親)との交雑によるものであろうと述べています。極めて複雑な遺伝子構成を持っていることがわかります。今は、人為的に受粉させて作出したのか、自然に交雑したのか不明ですが、いずれにしろ、その1本がもとになって増やされています。

  本種は雑種なので、ソメイヨシノどうしを受粉させても、親と同じサクラは生まれません。結局、接ぎ木をするか、挿し木でないと増やすことができません。普通、オオシマザクラの苗木に芽接ぎをします。クローンなので同じ場所では、どの株も同じ時期に咲き、散るのです。もちろん、植えた場所の緯度や標高が異なれば花期は一様にずれてきます。その植木職人が苗木の販売を促進するために、当時有名であった奈良の吉野山にちなんでヨシノザクラ(吉野桜)と名づけました。しかし、この品種名では、吉野山に多いヤマザクラと誤解されるおそれがあるとして、博物学者の藤野寄命(ふじのよりなが)氏が学会に提案し、1900年(明治33年)にソメイヨシノ(染井吉野)と改名されました。改名されてもヨシノが付くのは腑に落ちません。吉野山とは関係ないからです。

  なお、ソメイヨシノの判定は、次の点をよく見ることです。群馬の平野部では3月末頃に葉の展開前に開花する、花は赤みを帯びる、よく開いた花の直径は約4cm、花は3〜5個が散形状につく、花柄、萼筒及萼片に毛がある、などの点。
  写真 重たいほど多数の花が付く

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<協会活動のトピック>
群馬県立観音山ファミリーパーク『自然の森の樹木』冊子完成

  KFP担当 大畠 純子

冊子の写真   園長さんの依頼で、2014年10月8日から始まった観音山ファミリーパーク(KFP)の自然の森の植生調査でしたが、2年半に渡る毎月1〜2回の調査の結果、木本100種、草本92種以上を確認しました。調査に参加したKFP職員と協会員の皆さんの努力のたまものです。この結果を多くの方に有効に活用できるように、園と当協会が著述監修の本「自然の森の樹木」が出来上がりました。

  本を開くと、コースに沿った樹木の美しい写真とその解説が詳細に書かれています。草木の開花状況の表も掲載されています。この本を持ってコースを歩けば、四季折々の森を楽しむことができ、独学も可能です。




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<緑の窓> 森林整備活動を通して考える

  顧問 大松 稔

森林整備の写真   昨年の7月11日付け協会紙[第52号]の緑の窓で紹介した当協会が実施する前橋市富士見町地内、空っ風街道沿いの「桜の里」の森林整備には、昨年7月下旬から11月末までの間で延9日かかり、計画どおりに終了し見違えるように綺麗になりました。その実施地は松くい虫被害跡地で、面積1ヘクタール(延長200m、巾50m)に密生する背丈3〜4m、径2pのアズマネザサ(篠竹ともいう)の刈払いを主に、点在する枯損木の伐採と整理を実施しました。アズマネザサは野生動物でも活動が難しいくらいに密生し、しかも蔓が絡まっているため刈り払い機で切ってもなかなか倒れず大苦戦しました。今回のアズマネザサの状況は、これまで当協会が実施してきたサンデンの室沢交流の森など幾箇所とほぼ同じに感じました。地元森林組合によると赤城山南麓に広がる松くい虫被害地も全く同様で、刈払いにはベテラン作業員でも通常の数倍の労力を要するとのことで、今後の里山復旧の大変さを痛感しました。

  アズマネザサは中部以北に分布するササで群馬県でも広く分布しており、地中の地下茎をどんどん増やして群生します。このササの群生は水質保全や土壌崩落の防止などに一定の効果がありますが、林床への光の到達量を制限するため、樹木の実生、稚樹の生育阻害を招き他の植物の生育地を奪うという自然植生や種の多様性の観点からは負の要因となっています。このため、ササよりも森林の方が水源の涵養や景観の形成、二酸化炭素吸収源など公益的機能が高いばかりか生物多様性の保全にも貢献すると言えます。

森林整備の写真   前橋市域の赤城山南麓に所在する7,400ヘクタールの森林は、人工による植栽地が60%でその内3分の2が松林であったが、昭和50年代からの松くい虫被害により、標高600m以下の松林は壊滅状態となりました。松により被圧されていたアズマネザサは松の枯損により林床への光の到達量が増え、猛烈な繁茂を続けています。本県を代表する赤城山、船津伝次兵衛氏の時代から守り育てられてきた美しい健全な森林がいまピンチにあります。

  次代に健全な森林を引き継ぐため当協会は今後とも森林整備活動に努めたいと考えています。

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<豆知識> 雑草の話 5

 理事長 関端 孝雄

コニシキソウの写真   舗装された道路脇の隙間や割れ目などごく狭い場所にもしっかり根を張って生きている雑草があります。どう生き抜いているのでしょうか。

  北米原産の1年草でトウダイグサ科のコニシキソウ(図1)を眺めてみます。茎は暗紅 色で白毛が生え、二又分枝しながら地面を這うように横に広がっていて、あたかも踏ん でくださいとでも言っているような姿です。茎を切ると白い乳液が出ますが、皮膚に着 くとかぶれることがあるようです。葉は対生で複葉にも見えますが、葉腋から芽や花を 出すことから単葉であることが分かります。葉の中央にある暗紫色の斑点が特徴の1つ です。

杯状花序の図   夏から秋にかけて花を咲かせますが、葉腋に面白い形(?)の赤っぽい花序を着けます。それは杯状花序と呼ばれるものです(図2は総苞の中に1個の雌花と4個の雄花があります)。雌雄の花には花被がありません。受粉にはアリが手助けしてくれます。雌花では種子が熟してくると子房は立ち上がり、やがてそれが乾燥して種子を弾き飛ばします。小さな植物体なのでそれほど遠距離は飛びません。しかし、受粉させたアリとは別種のアリがやって来て種子を巣に運搬します。ところがこのアリは種子を殆ど食べず巣の外に出してしまいます。これでコンクリートの隙間でも遠方までも搬種してもらえます。

  多くの緑色植物は水と二酸化炭素を原料にして、光のエネルギーを使って光合成を行うことで体物質を合成しています。ところが、コニシキソウはこれと同じ光合成を行う場所以外に、光がなく光合成ができない時間帯でも二酸化炭素を吸収できる仕組みを他の場所に設けました。その結果、十分な量の二酸化炭素を確保できます。ですから高温や乾燥など条件の厳しい環境に強いわけです。このように生きるための戦略を多数備えています。

ニシキソウの写真   コニシキソウの仲間には、在来種のニシキソウ(図3)があります。ニシキソウは葉の斑点が目立たず、葉の緑色と茎の紅色が良く目立ちます。つまり「二色(にしき)草」ですが、「錦草」と記した方が感じが良いようです。ニシキソウは今や帰化植物のコニシキソウに寄り切られています。その他、外来種のオオニシキソウなどがあります。

(写真 上から図1:コニシキソウ、図2:杯状花序、図3:ニシキソウ)

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<群馬の自然災害> 第1回 からっ風と大火 

 群馬地球温暖化防止活動推進センター長 中島 啓治

解説    昨年末12月22日の糸魚川大火では、山を越えた風が南風となって日本海側の低気圧 に吹き降ろす際、空気が乾燥して気温が上がるフェ−ン現象が起きていました。

天気図   ところで、群馬の「からっ風」は、上州名物とされ、気候を特色づけるものですが、その名前のとおり秋の終わりから翌年の春先にかけて関東平野一帯を吹きわたる冷たい乾燥した季節風です。裏日本に雪を降らせて乾燥した空気が、上州の山脈を吹き降りたもので、強い風が吹くのは、11月から翌年の4月までの半年間に集中しています。前橋付近は特に強く、からっ風の中心です。西高東低の冬型の気圧配置(右の天気図参照)は数日間続きますので、建物は極端に乾燥してきます。さらに暖房の必要が増すことになります。

  出火の原因では過失が最も多く、冬期に出火が激増しています。明治時代の新聞には、高崎・前橋の大火の記録があります(表1)。ぐんまの噴火 災害 草軽 縣令(平田一夫2003)の"新聞に見る群馬の災害(明13〜昭16)"によれば、火災の記事が45回ありま す。強風による大火は19回ですが、その13回の記事には 北、西北、西 と風向が記さ れています。また、11月から4月の期間は35回で、大火は15回です。大火の約80%が からっ風の時期です。 天気図 例えば、昭和5年2月27日の上毛新聞には、見出しに「折柄の烈風中に発火 目貫七十餘戸を焼く 必死の消防も水利の悪しく 暁前橋市の大火」、内容は「26日午前5時15分頃前橋市横山町より発火し、折柄北々西7米半の烈しい赤城颪(おろし)に煽られて火勢は猛烈に見る見る中に西方に燃え拡がり(略)一帯の全部を焼払った。」とあります。群馬県内各地の大火を報じた記事には、「西北の風 土砂を吹きあげる程」、「折柄の西北強風にあほられてたちまち燃え広がり」、「赤城風烈しく拭きさびければ火勢益々に 烈烈を加え」、「西北の風吹き荒び見る見る大火となり」のような表現がなされています。大火により人命、財産など群馬が失ってきたものは計り知れません。

  激しく吹きすさぶ「からっ風」だけでなく、無慈悲に繰り返される「大火」、これが上州人の気質に影響を与えてきたという考えは如何でしょう。

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<協会員の声> 自然の解説者になって

第14期生 野口 強志

観察会の写真   今まで教育という言葉とは無縁の環境で生きてきました。我が娘が小学校に入学するときに、親としてなにか教えてあげられることはないかと思い、おもしろそうだという単なる興味本位で始めたのが「ぐんま昆虫の森」のボランティア活動でした。その娘も来年大学受験を迎え、親とはすっかり遊んでくれなくなり(笑)悲しいかぎりです。昆虫の森での経験や活動は、自分の自然への興味や取り組みをどんどん広げていきました。

観察会の写真   2年前、県の「緑のインタープリター養成講座」を受け昨年「ぐんま緑のインタープリター協会」に入会しました。地域の子供たちへさまざまな自然体験活動をとおして、自然を愛し、感性を磨き、心豊かな人に育つためのお手伝いができることに、やりがいと誇りを感じています。自分自身、今興味があるのが水生昆虫です。水生昆虫は河川の環境問題に多く関わってくるので、必ず講習等のカリキュラムに組み込まれています。昔、川遊びでつかまえた気色悪い生物に狂喜乱舞したころが懐かしく、今ではタモ網と図鑑を片手に週末川遊びに出かけています。

  ガガンボやヘビトンボ、カワゲラやトンボのヤゴをつかまえては、これは何の仲間かなとニヤニヤ調べ楽しんでいる「あやしいおじさん」になっています。

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<編集後記>

  春の訪れと共にインプリ協会の2017年度の活動がスタートしました。新会員の皆さんが協会に運ぶ春風が楽しみです。一人一人が輝く「協会活動」を目指し、皆で力合わせて頑張りましょう。(Y・U)

<pdf版>

協会紙 平成29年度春季号 第55号 pdf版

協会紙 平成28年度新年号 第54号 pdf版

協会紙 平成28年度秋季号 第53号 pdf版

協会紙 平成28年度夏季号 第52号 pdf版

協会紙 平成28年度春季号 第51号 pdf版

協会紙 平成27年度新年号 第50号 pdf版

協会紙 平成27年度秋季号 第49号 pdf版

協会紙 平成27年度夏季号 第48号 pdf版

協会紙 平成27年度春季号 第47号 pdf版

協会紙 平成26年度新年号 第46号 pdf版

協会紙 平成26年度秋季号 第45号 pdf版

協会紙 平成26年度夏季号 第44号 pdf版

協会紙 平成26年度春季号 第43号 pdf版

協会紙 平成25年度新年号 第42号 pdf版

協会紙 平成25年度秋季号 第41号 pdf版

協会紙 平成25年度夏季号 第40号 pdf版

協会紙 平成25年度春季号 第39号 pdf版

協会紙 平成24年度新年号 第38号 pdf版

協会紙 平成24年度秋季号 第37号 pdf版

協会紙 平成24年度夏季号 第36号 pdf版

協会紙 平成24年度春季号 第35号 pdf版

協会紙 平成23年度新年号 第34号 pdf版

協会紙 平成23年度秋季号 第33号 pdf版

協会紙 平成23年度夏季号 第32号 pdf版

協会紙 平成23年度春季号 第31号 pdf版

協会紙 平成22年度新年号 第30号 pdf版

協会紙 平成22年度秋季号 第29号 pdf版

協会紙 平成22年度夏季号 第28号 pdf版

協会紙 平成22年度春季号 第27号 pdf版

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2010年11月1日更新
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