NPO法人ぐんま緑のインタープリター協会紙

協会紙表紙

新年号 [ 第82号]  2024年1月10日


「大地の秘密に魅せられて!」

ぐんま地質・岩石研究会 矢島 祐介

 群馬県は、ほぼ県内全域がフォッサマグナという大地質構造帯の中にあり、また、中央構造線という大断層が横断しているため、複雑な地質からなっています。地質的にも古生代の海の堆積物から新生代の火山噴出物と岩石の種類は多岐に渡っています。群馬県がどのように誕生して、現在の姿になったのか、その生い立ちには誰もが関心を持っています。「ぐんま地質・岩石研究会」は、そんな群馬県の地質・岩石を少しでも明らかにしたいものと取り組んでいます。2020年4月に発足し、渋川市で週一回の集まりを持っています。

私たちの活動の一端を紹介します。

1.啓発の活動
 群馬県内の山や丘陵地、河原に出かければ、地質を反映した各種の岩石・石ころに出会うことができます。県内の利根川、鏑川、渡良瀬川、下仁田町、安中市、太田市の6箇所の岩石標本セットを作成しました。昨年は、渋川市の利根川で、今年になって太田市の八王子丘陵で観察と岩石標本セットづくりを行いました。

2.調査の活動
 谷川岳の調査で、天神尾根で文象斑岩という珍しい岩石を発見しました。沼田市迦葉山では、深い海で噴出した材木状軽石を見つけています。榛名川上流湯沢で東日本火山帯の火山フロントに見出される灰長石巨晶や角閃石巨晶を報告しました。
自然観察の写真
3.普及の活動
 群馬の生い立ちに関する疑問には、調査を行なって資料を作成するなどの対応をしています。県民向けの地学や環境問題の活動には、できる限り一緒の活動をしています。

写真:勝負沼付近の石切り場跡で藪塚石を観察

※問い合わせ先 ぐんま地質・岩石研究会 柿沼俊之 TEL027-346-0430

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校庭の樹木27
 〜区別が難しいというワジュロとトウジュロ〜

 顧問 亀井 健一

 いつの間にか我が家の庭にシュロ(棕櫚)が生えてきました。野鳥がどこかで実を食べ、種子を運んできたようです。シュロは栽培が容易なので、あちこちに植えられています。ワジュロ(和棕櫚)に比べ、葉の裂片の先端部が垂れないトウジュロ(唐棕櫚)が多く利用されています。なお、和名シュロは漢名「棕櫚」を音読みしたものです。

シュロの写真  両種は、ヤシ科シュロ属の常緑性単子葉植物です。幹はかなり太くなるが年輪ができません。また枝を出しません。根は鬚根で葉脈は並行脈です。幹を覆う褐色の葉鞘は、ぼろ切れのようですが適度の硬さがあり、腐りにくく、縄、ほうき、たわしなどに使われてきました。

 ワジュロは高さ5〜10mになります。葉は幹の先にまとまってつき、葉身は直径50〜80pの円形で掌状に深裂します。葉の裂片は曲がって垂れ下がる傾向があります。葉柄は長さ約1mになります。一方、トウジュロは高さ4mほどになり、葉の面積はワジュロよりやや小さく、葉の組織が硬いために、枯れた葉は別にして、葉の裂片の先は垂れ下がりません。葉柄はやや短いです。これらの点が見てわかる両種の特徴です。世間では区別が難しいと言われているが、葉の大きさと裂片のたれ具合でほぼ区別可能です。

シュロの写真  両種は雌雄異株であり、花期は5〜6月で似た花が咲きます。雄株には黄色の雄花のみが多数ついた雄花序が垂れ下がります。花序とは花の集まりのこと。雄花序(図1)はニシンの卵塊であるカズノコに似ています。雄花は肉質の花弁3個があるが平開せず球状(直径約3.5o)になっています。雄花序は花期が終わると用済みになるので枯れてこげ茶色や黒褐色に変色します。

 雌株には雌花序(図2)が斜上します。雌花序には淡緑色の雌花が多数つき、雌花は花弁3個からなり球状(直径約2o)です。雌花序には両性花が雑居するそうです。果実は淡緑色の球状液果(直径約1p)ですが、熟すと緑黒色になります。果実は鳥により散布されます。
 成木の場合、雄株か雌株かは、6月に入れば花序を見ると判明します。雄花序は枯れ始めて黒っぽくなり、雌花序には淡緑色の小さい幼果が多数ついています。この違いは明瞭です。

写真 上:図1.雄株の雄花序、下:図2. 雌株の雌花序

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<トピックス>

12月19日(火)株式会社サンワ「美しいふるさと基金」遠藤宗司様より運営資金として10万円ご寄付頂きました。

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<緑の窓> 
「玉原湿原」が【未来に残したい草原の里100選】に選定

 第18期生 濱田 誠、第20期生 二川 真士

写真

 玉原湿原は、玉原高原のブナ林に囲まれ、標高約1200m に位置し大小5つの湿原から成る面積約4haの小さな湿原です。その玉原湿原が2023年5月に「未来に残したい草原の里100選」に選定されました。

 草原の里100選は、貴重な草原とその価値を次世代に引き継いでいこうと、様々な分野の識者で構成される全国草原の里市町村連絡協議会が選定するもので、2023年度に新たに14ヵ所が選定され、全国で48カ所となりました。

 草原の里100選の選考基準は、自然そのものに加えて、維持する仕組みや共生型社会の実現に向けた波及効果なども対象となっています。すなわち、玉原湿原の自然の価値自体に加えて、「利根沼田自然を愛する会」(以下愛する会)の守る・伝える・調べる活動が評価されたものです。

 愛する会の活動としては、1973年から始まった玉原ダムの建設時に、当初湿原が水面に沈む計画であったのを、愛する会の働きかけによりダムの堤高を下げることで湿原が守られた歴史があります。現在は、月例観察会や子供観察会、さらに植物開花状況の記録、外来植物の除去作業、ブナ幼木移植等の活動も継続的に実施しています。また、愛する会では玉原を案内できる人を「森の博物館玉原 楽迎員」と称しており、2023年から次世代の楽迎員育成のための養成講座を実施しています。
 近年では、湿原を中心にニホンジカによる様々な植物への食害が顕著になりつつあり、これに対してシカ防除ネットを設置するなど、当会が主体となり様々な対策及び調査活動を実施しています。

 草原の里100選への選定をきっかけに、玉原湿原ひいては玉原高原が守るべき大切な場所であることを、地域住民をはじめとして多くの人に知ってもらい、次世代にその豊かな自然を引き継いでいく取り組みの輪が広がることを期待しています。

 協会員の皆様も是非、自然豊かなブナの森と湿原のある玉原高原に足を運んでみてください。

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<豆知識> 雑草の話31 ハキダメギク

 顧問 関端 孝雄

ハキダメギクの写真  6〜11月ごろに散歩をしていると道路沿いの所々で黄色い小さな花を付けた可愛い雑草を見かけます。花をよく見ると,中心部が黄色で周囲に白い花弁をつけたキク科の頭花です。これはハキダメギクと呼ばれ、牧野富太郎博士が東京のとある掃き溜めで(たまたまでしょうか?)見つけたといいます。

 ハキダメギク(掃溜菊・図1)は、キク科コゴメグサ属の一年生植物です。原産は北米の熱帯地方で、大正時代に帰化したとされ、関東地方以西に広がっています。茎は二分を繰り返し,大きなものは丈が数10cmに。葉は対生し、茎の上部に付くものは葉柄がないか或いは短く,葉身は先端が細長い卵状披針形です。 ハキダメギクの写真 下方の大きな葉には葉柄があり卵状形で共に縁に浅い鋸歯があり葉身は3行脈状です(図2)。

 茎葉共白い毛が生えています。上部の枝は分枝し、その先には頭花を1つずつ付けます。頭花は直径が5mmほどで深いお椀型をしています。総苞片は半球形、ルーペで見ると花柄と共に腺毛が見えます。舌状花は普通5個あり白色の花弁の先は3中裂、その内側に黄色の筒状花が多数付いています。花の下に黒色の痩果(そうか)を付け、何れの実も白色の冠毛を生やします。筒状花の冠毛は両側に毛が長くならず先の方が細くなっています(図3)。
ハキダメギクの写真
 花期が長く沢山の種子を散布することが出来,更に寒さや暑さに強い種は帰化植物に適しています。
 そんなハキダメギクの花言葉は「不屈の精神」、英名は「勇ましい戦士」だそうです。

写真
上:図1.ハキダメギク
中:図2.図2.左_下部の葉 右_上部の葉
下:図3.左_総苞片、中央_舌状花、右_菅状花

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<やちょうの「や」12 >
 日本の国鳥は、トキ、タンチョウ、ヤマドリ?

 第1期生 粕川 昭久

学名に日本が出てくる名前
 国鳥は国家機関や学術機関が選定しますが、日本では1947年に日本鳥学会が選定しました。トキの学名は「Nipponia nippon」で、日本が2回もでてきます。またタンチョウは学名が「Grus japonensis」で、これは「日本の鶴」という意味です。しかし国鳥は『キジ』が選ばれました。タンチョウはロシア、中国に渡る渡り鳥であるし、トキも日本固有種ではありません。

キジの写真  キジは「日本固有種(22年9月)であり、日本の象徴になっている」(図1)。
 「オスは美しい羽を持ち、飛ぶ姿が力強く男性的であり、メスは母性愛と勇気を象徴している」。
 「姿態優美,羽色鮮やかで、人が好きになれる」
 「古事記や日本書紀などに登場し、馴染がある」
 「肉の味がよく、狩猟の対象にもなる」などによります。
 選定理由をよく読むと『男性的』と対比する『母性愛』、『食材になる』など昭和を感じる古さが見てとれます。

キジの写真 愛鳥週間で問題が....
 キジの学名は「Phasianus versicolor」でキジ目キジ科に属します。山地や平地の林、農耕地、河川敷などの草地で生活しています。オスは派手な姿形なので見ればすぐわかりますが、メスが難しいのです。メスは全体的に茶褐色で、ヤマドリのメスに似ています。ヤマドリのメスより白色をしており、尾羽は長いです。
 キジは走るのは速い(図2)。100m走でいうと12秒台で、短距離走者ようです。いざとなれば100m以上も飛びます。

 地上で抱卵から子育てはメスだけが行います。「抱卵中のメスは山火事で自分が焼け死んでも卵を守り続けた」という言い伝えがあります。私は刈り払い機で誤って、卵を温め中でじっと動かないメスを切ったことがあります。そのくらい動きません。
キジの写真  オスが縄張りを持ち、メスは複数のオスの縄張りに出入りするので乱婚の可能性が高いと言われています。睡眠は樹上でとります(図3)。

 日本のキジは毎年、数万羽が愛鳥週間や狩猟期間前などの時期に大量に放鳥され、問題が起こっています。日本には地理的な変異による4亜種が分布していたのですが、放鳥により亜種間の交配が進み、差異が不明確になっている点です。
 愛鳥週間はいいことだらけではない実態です。

上:図1. 旧一万円札 キジの夫婦の意匠
中:図2.キジのメス(ウィキペディア日本語版から)
下:図3. 木に留まるキジのオス(多々良沼周辺にて)

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<協会員の声> 「インプリに入会して2年」

第19期生 今井 由利枝

 会員になってから、いくつかのインプリの研修に参加しました。
赤城山では、大沼・小沼を巡りながらたくさんの草花や木々の名前を知り、覚満淵に生息する何とも不思議な生物「ヤマヒゲナガケンミジンコ」に出会いました。初秋の榛名湖を一周し、紅葉を楽しみながらつかの間の「紅葉博士」になれたような…(?)。
写真  多々良沼に行くと、車から降りてびっくり。手の届きうるところに白鳥の群れ。たくさんの水鳥にカワセミまで…。感動の嵐でした。
 どの研修に参加しても、今まで知らなかったことがいつもてんこ盛りです。毎回それぞれの分野の先生方が細かな部分まで楽しく教えてくれます。研修から帰って、日常に戻り、犬の"ちよ" ちゃんと散歩するとき、いつも見慣れていた家の周りの自然に、新しい発見もあります。
まだまだインプリ新入生の私ですが、とっても贅沢で貴重な時間を過ごさせていただいています。

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<編集後記>

 新年を迎えてまず望むことは、ウイルス達の影響をもう受けたくないということです。今回ご覧の通り盛りだくさんの計画が順調に進行し実行されました。協会員の皆さんには、いろいろな活動をして、協会紙に登場して頂きたいと思っています。(関端) 

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<pdf版>

協会紙 令和5年度新年号  第82号 pdf版

協会紙 令和5年度秋季号  第81号 pdf版

協会紙 令和5年度夏季号  第80号 pdf版

協会紙 令和5年度春季号  第79号 pdf版

協会紙 令和4年度新年号  第78号 pdf版

協会紙 令和4年度秋季号  第77号 pdf版

協会紙 令和4年度夏季号  第76号 pdf版

協会紙 令和4年度春季号  第75号 pdf版

協会紙 令和3年度新年号  第74号 pdf版

協会紙 令和3年度秋季号  第73号 pdf版

協会紙 令和3年度夏季号  第72号 pdf版

協会紙 令和3年度春季号  第71号 pdf版

協会紙 令和2年度新年号  第70号 pdf版

協会紙 令和2年度秋季号  第69号 pdf版

協会紙 令和2年度夏季号  第68号 pdf版

協会紙 令和2年度春季号  第67号 pdf版

協会紙 令和元年度新年号 第66号 pdf版

協会紙 令和元年度秋季号 第65号 pdf版

協会紙 令和元年度夏季号 第64号 pdf版

協会紙 平成31年度春季号 第63号 pdf版

協会紙 平成30年度新年号 第62号 pdf版

協会紙 平成30年度秋季号 第61号 pdf版

協会紙 平成30年度夏季号 第60号 pdf版

協会紙 平成30年度春季号 第59号 pdf版

協会紙 平成29年度新年号 第58号 pdf版

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2010年11月1日更新
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