NPO法人ぐんま緑のインタープリター協会紙

協会紙表紙

春季号 [ 第83号]  2024年4月15日


「新年度を迎えて」

理事長 櫻井 昭寛

理事長の写真  NPO法人ぐんま緑のインタープリター協会(以下インプリ協会)は平成18年に設立され今年度で18年目、前身のボランティア団体設立からは21年目になります。
 今日まで、多くの協会員の努力により協会運営が支えられ、多くの事業を広げてくることができました。またそれはこのインプリ協会の活動が社会的に認知され、必要とされている活動であるからとも言えます。
 インプリ協会の目的は、定款に詳しく書かれていますが、協会員が「人と自然の架け橋」になることです。これを簡単な言葉で言い換えると
 活動の目的は以下の3つです。
1.自然について学ぶこと
2.学んだことを他の人に伝えること
3.皆で幸せになること
 インプリ協会の会員は、事業に参加することに意味があります。参加しなかったらもったいないです。さらに講師をして、ぜひその楽しさを味わってください。特に赤城山での中学校林間学校の自然体験は初めて講師を体験する良い機会です。元々自然が私たちの先生です。失敗することを心配しないで、多方面で活躍しているベテランに何でも聞いてみましょう。
 令和6年度も多くの事業を計画していますので積極的に参加してほしいと思います。

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校庭の樹木28
 〜縁起のよい木とされたユズリハ〜

 顧問 亀井 健一

ユズリハの写真  本種は校庭、公園、庭などで見ることがあります。高崎市立東部小学校には本種が幾本もあり、校歌に歌われ学校のシンボルの木とされています。この植物は、春に出た新葉が秋になって成葉になる頃、前年に出た旧葉がほぼ一斉に落葉します。この新旧交代を、成長した子供に後を譲り代々栄えることにたとえ、縁起のよい木とされ、和名ユズリハ(譲り葉)と名付けられています。
ユズリハの写真  よく観察すると、春に出た新葉は秋になっても落葉せず、葉は下向きになるものの翌年の秋まで残っています。つまり満1年半は落葉しません。冬期にも葉があり、葉が全部なくなることはありません。ユズリハは普通の常緑樹です。
 本種は暖地の常緑広葉樹林内に生えるユズリハ科の常緑樹で、高さ10mほどになります。分布地は本州(福島県以西)、四国、九州、沖縄、朝鮮半島南部、中国中部とのことです。関東では茨城県、千葉県などに自生しています。
ユズリハの写真  葉は互生するが枝先に集まってつきます。葉身は長さ8〜20cmの長い楕円形で、縁はなめらかです。
 葉の表は光沢があり裏は白っぽく見えます。葉の柄は長く、赤くなることが多いようです。
 雌雄別株で、花期は5〜6月、いずれの株も総状花序を出し多数の花がつきます。雄株につく雄花は雄しべのみで花弁がなく、赤茶色の葯(花粉が詰まっている)が目立ちます。雌株につく雌花も花弁がなく、子房が次第にふくらんで若い果実になります。果実は秋に熟し、直径9mmぐらいの球状で藍黒色になります。
 本種は有毒植物であり、葉などに有毒のアルカロイドが含まれ、家畜が葉を食べると中毒を起こします。人も同様ですが、手で触れるぐらいでは問題ありません。

写真 上:赤い粒々が雄花の葯、中:子房がふくらみ始めた雌花、下:旧葉が落ち始めた秋のユズリハ

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<協会員の声> 「大人のための自然教室」に参加して 

第21期生 富田 弥生

 友達に誘われて参加した今回の研修、元々山育ちの私にとって自然は当たり前のようにある環境でした。しかし研修に参加してみると、講師の方たちの知識の深さに驚き、当たり前のようにあった環境を観ているようで観ていなかった事に気づかされました。特に多々良沼での野鳥の多さにびっくりしました。私は鳥を見ると羽やフンで咳が出ることもあり、鳥にはあまり興味がなかったのですが、先生方の説明と共にめぐる野鳥観察は新しい発見とわくわく感であっという間に時間が過ぎていきました。
写真  一番楽しみにしていた「森林と林業について、実習」ではチェーンソーによる伐採の体験をさせていただきありがとうございました。私は実家の山の竹の伐採をしていて森林や里山に竹が侵食していくことに心を痛めています。チェーンソーは使用することはないですが、山を維持していくことを改めて考えさせられる回になりました。どの回も大変貴重な時間を過ごさせていただきありがとうございました。

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<緑の窓> 
「テングノコヅチ」

 第20期生 平形 誠一郎

写真

 私は、昨年8月ハイキング部の行事に参加しました。登山道に咲いている花を見つけてメンバーの人に「ここ滑りやすいですよ。だってツルリンドウが有るもの」などと定番の笑い話をしていると、植物に詳しい人が一言「これは、テングノコヅチ」。私の話の方が滑ってしまいました。帰宅してから調べるとテングノコヅチはツルリンドウの変種で両者は酷似しています。実の赤色から天狗を連想し、実の形から小槌を連想して名付けられたようです。天狗は納得できますが、小槌と言えば昔話の打出の小槌でしょうが形が違います。疑問は解決しないままとなりました。
写真  12月にはインプリ広場での炭焼きとピザ作りに参加しました。炭焼きを見たくて参加したのですが、ピザ作りが楽しくて美味しくて、肝心の炭焼きは見逃してしまいました。その時に同じ班になった方のお誘いで、クラフト部のライングループへ加入させていただきました。
 クラフト部では、お正月飾り作りの行事が有り、素晴らしい綺麗な作品の写真をラインの中で見せていただきました。その中に「あっ」と思った写真が1枚有り、テングノコヅチの疑問は、解決しました。何が何処で繋がっているかなんて想像もできないですよね。 私は、生物昆虫部にも参加しています。虫の事は、何もわかりません。童心に戻って虫を探すこの部の人達のフワッとした温かい空気感が大好きです。
 来年度から、ハイキング部の運営のお手伝いをすることになりました。自然観察や解説などとは無縁の世界からインプリに入ってきた私にとっては大役ですが、いろいろなジャンルの人達と繋がりあってワイワイガヤガヤ野山を楽しく歩くのが、私の理想です。皆さんもハイキング部にご参加してください。

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<豆知識> 雑草の話32 ニワゼキショウ

 顧問 関端 孝雄

ニワゼキショウの写真  散歩で良く訪れる公園の芝生や街路樹の下などの草地に、夏の初め頃直径1.5p程の花を咲かせ群生する多年草を見かけます。北米原産で、アヤメ科に分類されるニワゼキショウです。現在日本全国に広がっているようです。葉を見るとサトイモ科のセキショウに似ていますが、花の方はアヤメのようには見えないのですが。 ニワゼキショウ(庭石菖:図1)は草丈が10〜20pの大きさで、茎の下部は平べったく、幅2〜3mmの線形の葉を多数付けます。茎の上部に2枚の苞に包まれた茎から数個の花を散形状に付けます。花は1日花で、色は白いものから赤紫色があり,白いものでも花被の下方は紫色です。白色花が優性形質で数が多いようです。

ニワゼキショウの写真  気になる花の作りは、6枚の花被片からなりその内3枚の外花被には5脈、もう3枚の内花被には3脈の紫の筋が入っています。雄しべは3個で花糸の下方が接して筒状になり、その中に雌しべを1個入れていて柱頭も3個です。どの色の花も花被片の最下部は紫色から更に黄色になっていますが花しべも鮮やかな黄色です(図2)。子房下位で毛に包まれた可愛い球形の子房が目立ちます(図3)。アヤメの雄しべは雌しべの下側に張り付いていますが、花の構造としては両者共同じです(花式は P3+3 A3 G(3))。直径約3mmの果実は球形のさく果(複数の子房からなり熟すと果皮が裂けて種子を出す果実)で下垂し、熟すと果皮は3裂し、中から表面に網目状の凹凸のある黒色種子を出します。花言葉は「繁栄」や「きらめき」などと言われます。

ニワゼキショウの写真  ニワゼキショウによく似ていて時折同じ場所に生育しているものにオオニワゼキショウがあります。草丈が20〜30pと大きいのですが花は径1cm位で小さく、さく果は大きいのです。花の作りは内花被片が外花被片に比べてやや小さく、ニワゼキショウの花被片と比べて先が尖っています。こちらの方がよりアヤメの花の構造に近い感じがします。

写真
上:図1.ニワゼキショウ
中:図2.花の構造
下:図3.子房・花柄・さく果

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<やちょうの「や」13 >
 「翡翠」はカワセミとヒスイ、どっちが語源?

 第1期生 粕川 昭久

カワセミの古名はソビ
カワセミの写真  カワセミはカワセミ科カワセミ属に属し、日本では留鳥ですが世界に多く生息します。漢字で書くと「翡翆」「翠鳥」と書きます。翡は赤い羽を表しオス、翠は青い羽を指してメスを意味します。メスとオスで翡翠(カワセミ)です。観察すると下のくちばしが赤いのはメス(写真1)クチバシ全体が黒いのはオス(写真2)で区別できます。カワセミの背中の光り輝く青色は色素ではなく構造色といい、CDやシャボン玉と同じ原理で光を反射します。胸から腹にかけてと頬は橙赤色で、こちらはメラニン色素によるものです。「水辺の宝石」とか「ヒスイのように美しい鳥」と言ってもいますが、宝石の翡翠(ひすい)はこの羽の色からつけられたもので、鳥の名称の方が先なのです。古くはソニドリとかソニと呼ばれました。ソニが変化しソビにそしてショウビンに変化し、同属ですが名の大きな違いのある「アカショウビン」もここからの由来があります。英語名がKingfisherなので「漁師の王」とでも言いましょうか。羽の美しさは名称の中には入っていません。文化の違いというか捉えどころの違いを感じます。

カワセミの写真 子育ては暗い土の中
 全長は17cmほどで体重が19?40g。日本のカワセミ科のなかでは最小種ですが活発に動き、待ち伏せやホバリングをして見事に魚をとらえます。繁殖期にはオスがメスへ獲物を贈る「求愛給餌」を行います。番(つがい)になるとオス・メス交代で、壁のような土手に巣穴を掘ります。垂直の土手に向かって鋭いくちばしでアタックし、足場ができた所でくちばしと足を使って深さ50?90cmほどもある横穴を作ります。最近では川から離れた場所に営巣したり、川縁のコンクリート壁に開けられた排水管を利用することもあります。穴の奥で複数個の卵を産みます。孵化から巣立ちまでは22〜26日で、育雛もオス・メス共同で行います。これを年2?3回行う場合もあります。今まで美しいという話ばかりしてきましたが、営巣期は、魚を食べるだけあり、巣の奥から雛がフンをアナの外に向けてするので入り口まで凄まじい生臭い臭気が巣のトンネル内はするようです。美しいだけにギャップを感じてしまいますね。

上:写真1.カワセミのメス(栗林公園)
下:写真2.カワセミのオス(多々良沼)

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<編集後記>

 インプリ協会の令和5年度の活動をまとめてみました。実施した全てのイベントの合計は107回、講師343名、参加者4,094名でした。さらに自主研究会の活動を含めると、1年の半分は協会員のだれかがどこかで活動していました。
 インプリ協会に入っていてもイベントに参加しなければあまり意味がありません。令和6年度は、初めての方も含めぜひ講師を経験して頂きたいと思います。(櫻井) 

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<pdf版>

協会紙 令和6年度春季号  第83号 pdf版

協会紙 令和5年度新年号  第82号 pdf版

協会紙 令和5年度秋季号  第81号 pdf版

協会紙 令和5年度夏季号  第80号 pdf版

協会紙 令和5年度春季号  第79号 pdf版

協会紙 令和4年度新年号  第78号 pdf版

協会紙 令和4年度秋季号  第77号 pdf版

協会紙 令和4年度夏季号  第76号 pdf版

協会紙 令和4年度春季号  第75号 pdf版

協会紙 令和3年度新年号  第74号 pdf版

協会紙 令和3年度秋季号  第73号 pdf版

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協会紙 令和2年度春季号  第67号 pdf版

協会紙 令和元年度新年号 第66号 pdf版

協会紙 令和元年度秋季号 第65号 pdf版

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協会紙 平成28年度秋季号 第53号 pdf版

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2010年11月1日更新
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