NPO法人ぐんま緑のインタープリター協会紙

協会紙表紙

夏季号 第60号 2018年7月9日


タビオトープと田んぼの生きもの

  前橋市立児童文化センター長 佐藤 博之

ツミの写真  前橋市児童文化センターのある「前橋こども公園」には、木立があり、林があり、藪があり、川も池もあり、そして田んぼまであります。だから、それぞれの環境に応じた様々な生き物がすみ分けをしています。
 東には、メダカのふるさとであり、日本の原風景の一つでもある「田んぼ」が作られました。この田んぼの隅で、見慣れない鳩よりも小さな猛禽類が水浴びをしています。日本で一番小さい猛禽類「ツミ」です。来鳥は昨年からです。鳥類の観察に長けた職員が見つけました。小鳥を捕まえ、肉を啄んでいる姿が、何度もその職員のカメラに捉えられました。昨年、高い木立の上に営巣が確認され、今年も大きな欅の梢に巣が架けられました。巣には何と4羽の雛が元気に育っています。下には食欲旺盛な雛が食べ残した小鳥たちの脚などが盛大に落ちています。つがいの雌雄のツミは獲物を放り出すように巣に置くと、すぐにまた飛び立っていきます。4羽のツミが無事育ち、もうじき巣立ちを迎えます。
 この田んぼは、近くを流れる佐久間川(日本で一番短い一級河川)から水を取り入れています。その水に乗ってやって来たのか、今年初めてカエルの鳴き声が聞こえました。シュレーゲルアオガエルと言ってますが、正体は不明。鳴き声が聞こえた翌日、田んぼの側溝の中に大量のカエルの卵が産んでありました。これまでヤゴはいるものの、ほぼメダカの天下だった田んぼにカエルがやってきました。「カエルはメダカを補食するのだろうか」「カエルの卵はメダカの餌食だ」「カエルはメダカを食わないけれどオタマジャクシは雑食性だからメダカもメダカの卵も食う」「田んぼ本来の自然の姿を望むならカエルは必然だ」など、議論百出。ネット上の書き込みを調べました。ここでも各々が自分の経験で異なる結論で結んでいます。こんなにたくさんの意見や経験を持ち寄って、実はそういう持ち寄り方故にネット上のこの類の議論には「確証」というものがほとんどないのでしょう。動的な自然環境の中での姿は実証が困難なものが多いのですね。
 さて、このカエルの卵たち、どうしたらよいものでしょう。
写真 水浴びするツミ (写真提供:富澤勝則氏)

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校庭の樹木E  吉宗公の時代に導入されたトウカエデ

 顧問 亀井 健一

トウカエデの写真  校庭で行う自然体験活動の準備で、高崎市立乗附小学校を訪れたときのことです。校庭の際に沿って色づいたトウカエデ(唐楓)が整然と並んでいました。なかなか壮観です。また、平成4年に県の天然記念物に指定された伊勢崎市境の「境高校のトウカエデ」(現在は県立伊勢崎高等特別支援学校)を観察したこともあります。県内随一の巨木です。「推定樹齢100年以上、樹高23m、幹周3.2m」と表示されていました。街路、公園、校庭などでトウカエデを見る機会が増えてきました。扱いやすい樹木として利用されているようです。
 ネット検索で知ったのですが、トウカエデは江戸時代中期の享保6年(1721年)ごろ中国(清国)より6本が運ばれ、将軍に献上されたといいます。それを八代将軍吉宗が幕府の庭園(現在は浜離宮恩賜庭園)に自ら5本植え、残り1本が幕府の御薬園(現在は東京大学付属小石川植物園)に植えられたということです。
 その辺のことを確認しようと、平成28年に浜離宮庭園を訪れました。確かに5本のトウカエデが公園の一隅にあり、それらは巨木に成長しています。そのうち最も大きいものは、庭園事務所が平成28年5月に測定したところ、地面から1.3mの高さで幹周は3.7m、直径1.2mであったとのことです。優に巨木に分類される大きさです。この木がトウカエデとしては日本最大であると考えてよいでしょう。
 浜離宮庭園では園内案内図に「吉宗ゆかりのトウカエデ」と書いています。享保年間に植えられたとして、樹齢300年くらいかと思われます。日本におけるトウカエデの歴史はそんなに古くはないのです。なお、庭園事務所によると、吉宗が植えたという古文書はなく、言い伝えであるとのこと。吉宗治世の頃に植えられたのは、確かだと話していました。
トウカエデキの写真  このカエデは中国南東部や台湾が原産地なので、中国からきたカエデという意味で唐楓と呼ばれました。カエデ科の落葉高木で、樹高20mぐらいになります。成長が早く強健で大気汚染にも強いことから、多くの場所に植えられています。秋、鮮やかな黄葉や紅葉になります。葉は対生し、葉身は長さ4〜8cmの倒卵形で、上半分が3片に裂けています。この形が独特であり、一度見るとまず忘れることはないでしょう。葉に3つの角があることから、サンカクカエデ(三角楓)の名もあります。
 花期は4〜5月、淡黄色の小さな花が多数集まり、散房花序につきます。果実はカエデ特有の翼果で、分果は長さ約2cmで鋭角につきます(写真参照)。樹皮は成木になると、縦方向に多数の割れ目が入るのが特徴です。
写真 上:高崎市乗附小のトウカエデ、下:トウカエデの翼果

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<協会活動のトピック>

●4月15日 第16回通常総会が開催され、任期満了に伴い役員改選を行いました。
 新役員と組織体制は次の通りです。
 理事長:関端孝雄、 副理事長:浦野安孫、
 総務企画部会 総務担当理事:櫻井昭寛、企画担当理事:茂木由美、
 観音山ファミリーパーク担当理事:大畠純子
 普及部会担当理事:久保田憲司、 受託協力部会担当理事:吉田幸一、
 インプリの森部会担当理事:酒井良征
 監事:小崎昭一、宇多川紘

●5月3日 関端孝雄理事長が平成30年度群馬県総合表彰を受賞しました。
 部門:林業功労 森林ボランティア活動

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<緑の窓> 真底から喜びに満ちる里山に住んで

 第6期生 吉永 真

里山風景の写真  安中下秋間の里山にある終の棲家に住んで、走馬灯のように、緑を追っていた自分がいたことを想い起している。

 小学生の頃に、買ってもらった自転車で、大泉町の利根川の土手を、父の実家の千代田村上五箇に向けて、ひたすら走った。土手や、畦道にある野の花を求めていた。暗い中高生時代を抜けて、大学生になり、高崎市下豊岡町に下宿した。観音山丘陵をスクーターで越えて、富岡市まで行ったことも覚えている。緑に溢れた山河が心深く刻まれた。大学一年の時に夜行日帰りで尾瀬に行った。暗い山道を大清水から登り、尾瀬沼で夜明けを迎えた時、沼と白樺と水芭蕉が織りなす景色が天国のように感じ、味わったことのない感動を覚えた。高山植物を一つ一つ教えてくれる方に憧れた。
 その後、軽井沢に毎月一回、また、毎年夏と冬に長野県松原湖のキャンプ場に行った。そこで、牧師になるのだが、緑の関わりは一層深くなる。松原湖の一つ、大月湖から見える八ヶ岳は、里山の原風景となった。

 今年68歳になり上田市別所温泉で、循環型の自然農法を山間地で営む方の所に通うことになった。それは、里山での共生、絶滅危惧種の保護、自然農法の実践のためである。観音山丘陵・妙義・榛名・赤城と太田金山も、里山の原風景であり、利根川の中流域、下流域、烏川も不思議なほどに身体の奥深くに刻まれていることを覚える。
 緑に囲まれた田舎、そこにある木や草花、昆虫、鳥たちと、会話しながら過ごしている。何と幸せなことだろうか。
写真 書斎窓からの里山風景

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<豆知識> 雑草の話 10

  理事長 関端 孝雄

スイバの写真  家の近くには烏川に沿った土手が1km以上延びています。四季折々に雑草が土手を覆っています。時々刈られますが、しばらくするとまた緑に覆われます。これらの雑草は芽の位置が地面の近くにあり、根こそぎ駆除するのは大変な労力を要します。一方、土手からしてみると風雨による浸食から保護されている状態です。このことは田畑の囲いや畦道などでも同様で、とても有益な役目を果たしていると思います

 スイバは別名スカンポと呼ばれ、葉や茎をかじると酸っぱい味がする事による名前です。新芽を山菜として食べますが、ヨーロッパでは古くからソレルと呼ばれ野菜として食べられていたそうです。味の原因はシュウ酸で沢山食べると肝臓を傷めます。ムラサキツユクサではシュウ酸カルシウムを含み針状の結晶を検鏡できます。この他に多くの薬効があります。そして、スギナと同様酸性土壌に良く育つので土壌酸度の指標植物とされます。

スイバの写真  スイバ(図1)はタデ科ギシギシ(スイバ)属の多年草です。同属のギシギシの仲間は雌雄同株で緑色の花序に両性花を多数つけます。しかし、スイバはなんと雌雄異株で雌花、雄花を別株に紅色を帯びた花序にそれぞれ多数の花をつけます。しかも、普通では考えられない雌株が多数を占めます。それ故か、日当りのよい田畦、道端、荒れ地や土手などのギャップには素早く入り込む先駆植物の1つです。
スイバの写真 スイバの写真  また、スイバについて1923年に2人の学者(木原均、小野知夫)によってX染色体とY染色体が初めて発見されたことが報告されました。つまり、種子植物に性染色体が存在すると云うことです。スイバの性決定はX染色体と常染色体の比により決定されます。
 葉は互生につき、葉身は長楕円形で付け根は矢尻型をしています(図2)。茎上部の葉は茎を抱き,下部に行くほど葉柄が長くなります。
 雌しべは先が赤く3裂し、更に羽状に分かれており(図3)、風媒花の特徴を良く示しています。雌花の外花被3個は反り返り、内花被3個は受粉が済むと大きくなって種子を包み込み痩果を造ります。
 雄花(図4)は花被6個で大きな黄色の葯6個を備え花粉を産出します。

写真 上:図1.スイバ 中:図2.葉 下左:図3.雌花の花序 下右:図4.雄花の花序

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<群馬の自然災害>第6回 群馬の天気俚諺に見る気象災害 「東毛地域の天気」

 群馬地球温暖化防止活動推進センター長 中島 啓治

 群馬県は関東平野にむかって南東に手を拡げたような地形をしています。そのため、台風、前線、雷雨による豪雨・風による様々な気象災害が発生しやすいといえます。

 そこでの、毎日の生活と結びついた晴雨、寒暖の気象への関心は強いものがあります。古くからの生活から蓄積され多くの天気俚諺(ことわざ)の中から、主に東毛地域における災害に関わるものを取り上げてみます。

落雷の写真  「星空の次ぐ日は霜」(太田市)…放射冷却による霜害の警告です。
「雹が降るときは空が赤い」(藪塚本町)、「雷雲が赤い時は雹が降る」(大泉町)、「かみなり雨のとき、紅々とみえるところは雹が降っている」(太田市)、「赤城からの雷は雹をもってくる」(千代田町)…降雹による農作物の被害を起こすような強雷は、単純な熱雷から前線が関わる界雷の場合があります。雹が生成されるのは激しい上昇気流によるもので、この上昇気流が対流圏から成層圏の境界の圏界面に達した頃にあたります。赤城南麓の上昇気流は激しいということです。
「春に大きい西風が吹くと干ばつが来る」(太田市綿打)…天気の変化が例年と違うことに注目したもので、長期予報的なものです。科学的な因果関係の正否の解明は今後に待たれるものです。
「朝雷は大洪水の前ぶれ」(邑楽町)…非日常の天気現象に着目したものです。
「春彼岸に雨あれば、秋彼岸に大水あり」(太田市周辺)、「虹が利根川にかかると洪水」(大泉町)、「朝虹があると大雨(西虹に川を渡るな)」(館林市)…利根川上流に洪水対策としてのダム群が建設されるまでの長い間、洪水に苦しめられてきた東毛地域の天気俚諺です。
梨の被害の写真 「モグラが出ると大水」(太田市)、「ネズミが巣の場所を変えると大水」(邑楽町)、「ハチが高い所に巣を作ると嵐」(太田市)…動物、昆虫の動態に注意して、天気・天候の変化を予測したものです。

 科学的な方法での天気予報と違って、経験に頼る天気俚諺には限界はあります。しかし、経験則である天気俚諺は、科学的に見ると、日常生活に役立つものもあり、そのため生活の知恵として伝承され、使われています。

写真 上:落雷の様子 下:台風10号の梨の被害(1982.8.3)

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<協会員の声> インタープリターに出会って

 第16期生 前村 尚美

覚満淵の写真  数年前、偶然手にした「群馬県緑のインタープリター養成講座」のチラシ。初めて聞くインタープリターという言葉の意味も分からず、山登りを始めて植物に興味があった私は「自然の事を教えてくれるのならば・・・」と軽い気持ちで申し込みました。そして迎えた初日、講座の趣旨を知り、直ぐに「ヤバい、間違えた!」と思いました。ところが、体験型の講座はとてもわかりやすく、初回にして楽しいと感じました。講座では森林環境教育・安全対策・生徒理解・プログラム作成など様々な分野を学びました。その中で今の青少年の問題点、その解決策には自然体験が重要であるというお話を聞き、我が子に当てはめて考えました。「確かにその通りだな〜。自然体験させてこなかったな〜」と。しかし後悔先に立たず。ならば、これからの子供達に伝えたいなと思うようになりました。

 そこでもっと知識と経験を得る為、ぐんま緑のインタープリター協会に入会しました。ここには観察会や研修会に参加するたび、いつでもなんでも答えてくれる先輩方がいます。毎回「へ〜!」「ほ〜!」の連続です。この年になって、知ることは楽しいと思える日々に出会えて幸せです。

写真 赤城山 覚満淵

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<編集後記>

 「ぐんま緑の県民税」今年度で課税期間が終了する。課税前の公聴会で税金が有効に使用されるよう要望をさせて頂いた。貴重な自然環境の保護・保全が出来たか、結果を評価検証して頂きたい。また、今後どうするのか、国が予定している「森林環境税」の対応など県民に説明が必要になる。(吉本)

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<pdf版>

協会紙 平成30年度夏季号 第60号 pdf版

協会紙 平成30年度春季号 第59号 pdf版

協会紙 平成29年度新年号 第58号 pdf版

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協会紙 平成28年度春季号 第51号 pdf版

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2010年11月1日更新
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